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ヒマつぶし情報

2023.11.02

【キタコレ!】伊藤桃連載vol.43 北海道を走る“日本一貧乏な観光列車”とは!?

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フルコースもびっくり、往復4時間たっぷりのグルメに、地元の人々による温かいお出迎えに手作り感満載の可愛らしい車内。

それでも…今回ご紹介するのは、“日本一貧乏な観光列車”です。

走る場所は、北海道の函館から木古内を結ぶ道南いさりび鉄道。ここはかつて、JRの江差線でしたが、北海道新幹線開通に合わせて第三セクター…いわゆる民鉄になりました。ただでさえ赤字路線だったのに加えて、車両はJR時代からのお古の車両。さらに車両改修の予算も少ない…。そんな中で、観光列車を走らせるという厳しい状況の中でできたのがこのながまれ海峡号です。

ツアーを主催するのは日本旅行さん。改札前で受付をし、集合してホームに向かいます。

ここで渡されるのが手作り感満載の旅のしおり。まるで修学旅行のようで期待が高まります。

そして、いざホームへ。

深い紺色に華やかな星空が可愛らしい車両がお出迎えしてくれました。この車両も元は1980年代に製造されたもの。そこに、新たにデザインを施しました。深い紺色は函館の夜景が美しく見える宵の口をイメージしたもの。そこに函館山の形と津軽海峡の水平線をイメージした白いライン、漁火をイメージしたオレンジの円を描きました。星の中には、今まで江差線を走っていた寝台列車…「カシオペア」や「北斗星」の星座も隠れています。

車内に入ると、大漁旗といかのぬいぐるみがどどんと飾られています。

訪れたのは、9月末。秋らしい装飾もほどこされていました。これはなんと、毎回運行前に1から飾り付けられています。“貧乏”な道南いさりび鉄道、この車両は観光列車専用ではなく、普段の定期運行にも使われており、そのため毎回イベントの度にお化粧しをしているのでした。

このテーブルも、観光列車の際だけの特別なモノ。こういった素材、そしてデザイナーなどのチームも地元を愛する“オール北海道”で作り上げました。

テーブルの上には、函館銘菓のクッキーと飲料がセットされています。あらかじめ、アルコールかソフトドリンクか選べて、アルコールの場合は地ビールでした。

ちなみに、持ち込みも可能ですし車内販売もあります。

私は地元の、はこだてワインの「年輪」で乾杯!!こちらはおつまみ付きで800円になります。

さぁ、多くの職員さんに見送られながら出発です!!

まずは、添乗員のみなさまのご挨拶を聞きながら函館市街を走っていくのですが…。ここで現れたのは地元の高校生。沿線の水産高校に通っているそうで、実にういういしい。

彼らは東日本大震災被災地のひまわりを、沿線にさかせるボランティアを行っているそうで、そのひまわりの種をいただきました。気持ちが嬉しいプレゼントです。

そして、最初の下車駅は上磯駅です。ホームには、昔懐かし立ち売りスタイルの方々がずらり。この駅では停車時間が約16分間あり、地元の商工会の皆様の自慢の1品を購入できます。

事前に、ここで使える500円券をもらえるのが嬉しい。

なんとこの贅沢にたっぷり蟹が乗った蟹ちらしが300円。ご飯がたくさん出てくるながまれ海峡号、少しずつ楽しめるようにと特別サイズで販売してくれているそう。そして、地元の商工会を盛り上げたいという思いから採算度外視で、この場に立ってくれているそうです。

味はもちろんバツグンに美味しくて、そして心がほっと温かくなりました。

途中、信号所での停車時間もあります。ここでは、夜景の名所でも有名な函館山と津軽海峡をじっくり味わうことが出来ました。

さらに、その停車時間を活かして撮影タイムもあります。

駅長さん帽子をかぶって、イカ釣り漁船のいさりびのランプをもってぱしゃり。

なかなか間近でみることのない電球に、乗客からは歓声が上がっていました。

お次は渡島当別駅で途中停車。

この駅舎は“ある建物”をイメージしたもの。

その“ある建物”とは、修道院です。この渡島当別駅は、観光地にもなっているトラピスト修道院の最寄り駅で、駅舎内には聖像もあり、神秘的な雰囲気でした。

こうして、ただ通り過ぎるだけでなく沿線のことをゆっくり知る時間もあります。

だんだんと暗くなっていき、約2時間かけて終点の木古内駅に到着。

ホームでは、木古内町の方々、そして街のキャラクターの“キーコくん”が出迎えてくれました。

新幹線との接続駅でもある、木古内駅の目の前には道の駅「みそぎの郷 きこない」があります。こちら、普段は18時に閉館なのですが、このながまれ海峡号の到着に合わせて、営業時間を延長して待っていてくれていました。

存分にお土産を購入したり、あらかじめ車内で注文していた名物をゲットしたりすることができます。

こちらでゲットしたのは、人気No.1というはこだて和牛のコロッケと、みそぎの塩という木古内名物の塩を使ったアイス。ほくほくのコロッケに、塩味がきいたさっぱりアイスがたまりません。

さらに、この木古内での停車時間には、お弁当が積み込まれます。キッチンや冷蔵庫などがない、ながまれ海峡号…。それでも、出来立ての温かいお食事を提供したいということで、道の駅内のレストランで調理した出来立てほやほやのお弁当をいただけるのです。

メニューは意外にもイタリアン。こちらは、世界的なイタリアンシェフが監修しているレストラン「どうなんde’s」によるもので、ながまれ海峡号が走る道南地方にこだわった食材をふんだんに使用しています。さらに、スープとみそぎの塩がふんだんにつかわれた塩パン付き。

すっかりお腹もいっぱいになってきますが、このながまれ海峡号のメインディッシュはここから!!

再び折り返して発車した列車が次に停まるのは、茂辺地駅です。この駅では…

ホームでBBQ、できちゃうんです。大粒の帆立にアオツブ、そして北寄貝。香ばしい匂いがたまりません。

こちらの食材は、地元のJAと漁協の方々がタッグを組み選んだ極上の素材。それを焼きたてのままお弁当箱に詰めて車内でゆっくりいただけます。

「こんな風に炭火を使って焼き上げているところはなかなかないでしょう」と誇らしげに話していた焼き場の方が印象的でした。この皆様もほとんどがボランティア。地域のために…そういった思いが伝わってきます。

この「いさりび焼き弁当」の中身は、海鮮焼きだけではありません。他にも、唐揚げなどの付け合わせ、さらに地元のお米を使ったおにぎりといなり寿司、デザートに珈琲大福がついてきました。こりゃもうお腹いっぱいだと嬉しい悲鳴です。そのどれもが美味しく、思わず日本酒に変えてさらにもう1杯と頂いてしまいました。

最後に…函館といえば「100万ドルの夜景」。街が近づいてくると、遠くにそのまばゆい町明かりが見えてきます。

ここで、最後のおもてなしがありました。アナウンスがあったあとに、ふっと車内の灯りが減光されたのです。これは、夜景が見えやすいようにという粋なはからい。この車窓は、路線名が違えども江差線時代から変わりません。一緒にいった母が感慨深く「懐かしい…」とつぶやいていたのが印象的でした。

往復約4時間の旅を経て、20時2分、函館駅に到着です。

最後の挨拶、そしてお品書きにも「華々しさはないかもしれませんが、皆様に楽しんでいただけることを私どもの喜びとし、心を込めて、お届けさせていただきます」。との言葉がありました。“なにもない”からこそ“想いがたくさん詰まっている”。このながまれ海峡号、通常の運行は夏季のみですが、冬も「ながまれ海峡号いさりびおでん列車」や「ながまれ海峡号クリスマストレイン」を運行する予定だそう。

心温まる鉄道旅行に、出かけてみてはいかがでしょうか。

今回の探索人

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